施設ケアマネとは?仕事内容ややりがい、必要な資格について
高齢化が進む日本において介護の重要性が日に日に増しています。
その中でも介護施設や病院と利用者をつなぐ存在として注目されているのが「施設ケアマネ」です。
利用者それぞれにあったケアプランを作成し、生活の質を向上させるためのサポートを行います。
そこで、ここでは施設ケアマネの仕事内容ややりがい、さらには施設ケアマネになるために必要な資格について解説します。
ケアマネという職業に興味がある方はぜひ参考にしてみてください。
目次
ケアマネとは
ケアマネは正式には「介護支援専門員」と呼ばれ、要介護者やその家族が適切な介護サービスを受けられるように支援する専門職です。
要介護者のニーズを把握し、ケアプランを作成してケアサービスの手配や管理を行います。
医療と介護の連携を図りながら利用者が生活しやすい環境を整えていくやりがいのある仕事です。
ケアマネの種類
ケアマネは大きく分けると以下の2種類に分けられます。
居宅ケアマネ
在宅で生活している要介護者のサポートするケアマネのことです。
要介護者やその家族と直接相談しながらケアプランを作成し、在宅での生活をサポートしていきます。
施設ケアマネ
入所型の介護施設で働くケアマネのことです。
介護施設に入居している要介護者のケアプランを作成して、医療機関などの外部機関と連携を取りながら要介護者をサポートします。
施設ケアマネは兼務ができる
施設ケアマネは施設内の他の仕事を兼務することができます。
例えば、ケアマネをしながら実際の介護業務、相談員業務をすることも可能です。
しかし、ケアマネとしての業務に影響が出ない程度の仕事量に抑えることが大切です。
※施設ごとの兼務の条件については「施設ケアマネの主な働き方とその仕事内容」で詳しく紹介していきます。
施設ケアマネになるために必要な資格
施設ケアマネになるためには、介護支援専門員の資格を取得しなければなりません。
ちなみに、居宅ケアマネになるにもこの資格を取得する必要があります。
介護支援専門員資格を取得するためには
介護支援専門員になるためには、介護支援専門員実務研修受講試験に合格しなければなりません。
この資格は、公的資格と言って各都道府県が主導となって管轄しています。
試験が受けられるのは毎年10月で年1回です。
介護支援専門員資格の受験資格
介護支援専門員資格試験を受けるためには受験資格を得る必要があります。
受験資格は以下の2パターンです。
- 特定の国家資格を取得後、それに基づく実務経験が5年以上あること
- 相談員として介護施設などで実務経験が5年以上あること
上記のどちらかの要件を満たすと、受験資格を得られます。
1.特定の国家資格を取得後、それに基づく実務経験が5年以上あること
介護に関連する特定の国家資格を取得してから、それに関連する実務を5年以上行った場合に、受験資格を得ることができます。
<特定の国家資格とは>
- 介護福祉士
- 社会福祉士
- 看護師
- 作業療法士
- 保健師
- 精神保健福祉士
- 薬剤師 など
2.相談員として介護施設などで実務経験が5年以上あること
介護に関連する施設で相談員としての実務を5年以上行った場合に受験資格を得ることができます。
<相談員とは>
- 生活相談員
- 支援相談員
- 相談支援専門員
- 相談支援員
ケアマネ資格を早く取得したい場合は、1の流れで受験資格を得るのがおすすめです。
【施設別】施設ケアマネの主な働き先とその仕事内容
施設ケアマネは主に以下の施設で働いていますが、それぞれの施設で仕事内容や兼務の条件が異なります。
- グループホーム
- 特別養護老人ホーム・介護老人保健施設
- 有料老人ホーム
グループホーム
グループホームとは、認知症の高齢者が少人数で共同生活を送る施設です。
施設ケアマネは入居者一人ひとりのケアプランを作成し、その実施と評価を行います。
ケアマネ一人が担当する人数が多いため、他の施設と比較して仕事量が多いのが特徴です。
事務作業だけでなく介護スタッフとして実際に介護業務を行う機会が多いです。
主な仕事内容
- ケアプラン作成
- ケアプランの実施と評価
- 家族や地域との連携
- 施設運営
- 予算管理
- 介護スタッフの管理
- 介護業務
兼務の条件
- ケアマネとしての仕事に支障がない
- 同じ施設内、もしくは敷地内の他の仕事での兼務ができる
ケアマネとしての仕事に支障がない場合であれば、同じ敷地や施設内の他の仕事を兼務することができます。
しかし、兼務する仕事よりも施設ケアマネとしての仕事が優先になります。
特別養護老人ホーム・介護老人保健施設
特別養護老人ホームとは、介護が必要な高齢者が生活する施設で、24時間介護サービスを提供します。
介護老人保健施設とは、介護が必要な高齢者にリハビリなどの介護サービスを提供し、自宅で生活できるようにサポートする施設です。
これらの施設で働く施設ケアマネはケアプランを作成して実施するだけでなく、生活相談員としての仕事をする機会も多いです。
主な仕事内容
- ケアプラン作成
- ケアプランの実施と評価
- 家族や地域との連携
- 施設運営
- 予算管理
- 介護スタッフの管理
- 介護業務
- 生活相談員…利用者やその家族の悩み相談を受けて改善に努める
兼務の条件
- 利用者100名に対してケアマネ1人以上を配置するという条件を満たしていること
- 居宅ケアマネとの兼務はできない
1の条件を満たしていてケアマネの仕事に支障がない場合は他の仕事ができますが、居宅ケアマネの仕事はできません。
有料老人ホーム
有料老人ホームは、高齢者が自費で入居する施設です。
住居を提供するだけでなく食事・レクレーション・健康管理などのサービスを行います。
入居者の健康状態や生活習慣に応じた個別のケアプランを作成して実施し、生活の質の向上を目指します。
主な仕事内容
- ケアプラン作成・実施
- 施設運営
- 介護業務
- 施設独自のサービス
兼務の条件
- 同じ施設や敷地内の仕事であれば兼務できる
- 兼務している仕事とケアマネとしての仕事の勤務時間は、ケアマネの勤務時間数内に抑える
施設ケアマネがケアプランを作成するための流れ
施設ケアマネの主な仕事は、ケアプランを作成して実施するということです。
ここでは、ケアプラン作成からその実施までの流れを具体的に紹介します。
1.利用者やその家族とのアセスメントをする
ケアプランを作成するために、利用者の健康状態・心理状態・環境・日常生活、家族の意見などを聞き取ります。
ここでは、利用者の希望や要望だけでなく、家族の考えも聞くことが大切です。
2.ケアプランの原案を作成する
1で集めた情報を基にして、必要な介護サービスの種類や頻度、介護の目標を設定します。
ここでは、具体的な介護サービスの内容だけでなく施設に入所する期間の目安も定めることが大切です。
3.担当者会議を行う
2で作成したケアプラン原案をもとに、施設内の他の介護職員や看護師、医師、生活相談員など関連する専門職のスタッフとケアプランについての協議を行います。
この会議でケアプランの実現性を確認し、難しい場合は必要に応じて変更をしていきます。
4.ケアプランを修正する
3の会議内容をフィードバックして、ケアプランの内容を修正します。
5.ケアプランを利用者とその家族に説明して同意を得る
修正後のケアプランを利用者とその家族に詳しく説明し、理解と同意を得ます。
この段階で利用者や家族からの追加のフィードバックを受け、必要な場合はさらにプランを変更します。
6.ケアプランを実施する
5で合意が得られたら、ケアプランに沿った介護サービスを実施します。
7.ケアプランを随時見直す
ケアプランを実施後は、利用者の状況変化に応じて調整を行っていきます。
新たな健康問題によって環境が変わる場合も多いです。
施設ケアマネは現場で介護業務を行うこともある
施設ケアマネはケアプラン作成や予算管理など事務作業が中心になりますが、施設によっては現場で介護業務を行うこともあります。
居宅ケアマネは介護業務をする機会が少ないので、利用者と近い距離で実際の現場に近い介護をしたいという方は施設ケアマネを選ぶのがおすすめです。
施設ケアマネが現場で介護業務を行うメリット・デメリット
メリット | デメリット |
l 利用者の状況を実際に見られる
l 利用者と実際に関わることができる |
l 仕事量が多い
l 体力を使う |
施設ケアマネは介護業務を行うこともありますが、本来の仕事はケアマネなので、ケアマネとしての業務が手薄にならないように仕事量を調整することも大切です。
施設ケアマネは生活指導員・支援相談員を行うこともある
施設ケアマネは相談員業務を行うことも多いです。
生活指導員 | 要介護者の生活指導をする仕事で、利用者が日常生活や社会生活をスムーズに過ごせるように支援する |
支援相談員 | 介護老人保健施設で利用者やその家族の相談に乗り、適切なサービスや支援が受けられるようにする |
施設ケアマネは相談員として利用者やその家族の相談に乗ることもありますが、本来のケアマネとしての仕事が手薄にならないように仕事量を調整しましょう。
施設ケアマネのやりがい
施設ケアマネのやりがいはたくさんありますが、ここでは主なやりがいを3つ紹介します。
利用者を近くで支えることができる
施設ケアマネは利用者のニーズに合わせたケアプランを作成し、その実行を管理する役割を担っています。
利用者との距離が近いので、利用者の笑顔を見たり直接感謝されたりすることも多いです。
近い距離で利用者の生活や心を支えることができるのは施設ケアマネのやりがいの一つです。
中心的な役割として介護チームをリードする
介護では多方面の専門家が連携して介護サービスを提供しますが、ケアマネはその中心的な役割を担っています。
看護師・介護士・医師・セラピストなどさまざまな専門職チームの中心的な役割として利用者を支える仕事はやりがいが大きな仕事です。
専門性を発揮して成長し続けられる
ケアマネという仕事の分野は常に進化しているため、学び続ける必要があります。
介護技術や法改正に対応するための研修に参加したり、実際の業務を通して多くの経験をしたりすることによって常に学びがあります。
プロとして成長しながら働き続けられる仕事はやりがいが大きい仕事です。
施設ケアマネと居宅ケアマネの違い
ケアマネには施設ケアマネと居宅ケアマネがあり、それぞれ仕事内容や働き方が異なります。
ここでは、施設ケアマネと居宅ケアマネの違いを解説します。
担当件数
施設ケアマネ | 100人以内 |
居宅ケアマネ | 35人以内 |
施設ケアマネ
住居型老人ホームの利用者を担当するため、利用者の数が多い施設の場合は100人程度の利用者を担当します。
ケアマネ一人が受け持つことができる最大人数が100人なので、100人を超える施設はケアマネが複数人必要です。
居宅ケアマネ
自宅で生活する要介護者を担当するため、施設ケアマネと比べて少ない人数を担当することになります。
居宅ケアマネ一人が受け持つことができる最大人数は35人です。
働き先
施設ケアマネ | 住居型介護施設 |
居宅ケアマネ | 居宅介護支援事業所 |
施設ケアマネ
グループホーム・老人ホームなどの住居型介護施設で働きます。
居宅ケアマネ
自宅で生活する要介護者をサポートする居宅介護支援事業所で働きます。
仕事内容
施設ケアマネ | l 施設利用者のケアプランを作成し、生活をサポートする
l 兼務あり |
居宅ケアマネ | l 自宅で生活する要介護者のケアプランを作成し、生活をサポートする
l 兼務ほぼなし |
施設ケアマネ
施設ケアマネは老人介護施設に所属して、そこで生活する利用者のケアプランを作成・実施します。
主な仕事はケアプランの作成ですが、実際の介護業務や相談員業務を兼務することも多いです。
居宅ケアマネ
自宅で生活している要介護者のケアプランを作成し、自宅で生活しやすいようにサポートしていきます。
他の業務との兼務をすることはほぼないです。
働き方
施設ケアマネ | l 日勤
l シフト制 |
居宅ケアマネ | l 日勤 |
施設ケアマネ
勤務時間は所属している施設によって異なります。
介護業務を兼務する場合はシフト制で夜勤をすることも多いです。
居宅ケアマネ
介護業務が少なく面談や事務作業が多いため日勤が中心です。
ただし、基本的に土日休みが多いですが、土日しか家族を含めた面談ができない利用者の面談は土日に行うこともあります。
給与
施設ケアマネ | 月給22~32万円 |
居宅ケアマネ | 月給20~30万円 |
施設ケアマネ
施設ケアマネの月給は働き先の施設によって異なりますが月給22万円~32万円程度です。
ただし、夜勤がある場合は夜勤手当がつくので給与が上がります。
居宅ケアマネ
居宅ケアマネは施設ケアマネと比べて月給が2、3万円程度低いことが多いです。
ただし、事務所や土日出勤の形態などによって給与が異なります。
【まとめ】施設ケアマネと居宅ケアマネの違い
項目 | 施設ケアマネ | 居宅ケアマネ |
担当件数 | 100人以内 | 35人以内 |
働き先 | 住居型介護施設 | 居宅介護支援事業所 |
仕事内容 | l 施設利用者のケアプランを作成・実施する
l 兼務あり |
l 自宅で生活する要介護者のケアプランを作成・実施する
l 兼務ほぼなし |
働き方 | l 日勤
l シフト制 |
l 日勤 |
給与 | 月給22万円~32万円 | 月給20万円~30万円 |
施設ケアマネと居宅ケアマネは担当人数、働き方、給与など多くの点で違いがあります。
ご自身の生活スタイルや考え方と合う方を選んで働き先を決めるようにしましょう。
施設ケアマネに向いている人の特徴
施設ケアマネは利用者との距離が近くてやりがいも大きい仕事ですが、人と関わることが多いため向き不向きもあります。
ここでは、施設ケアマネに向いている人の主な特徴を紹介します。
人とのコミュニケーションが得意な人
施設ケアマネは利用者やその家族、看護師、医師、施設職員など多くの人との連携が求められる仕事です。
そのため、多様な人とスムーズにやり取りできるコミュニケーション能力が必要になります。
トラブルやクレームが発生した際には、落ち着いて対応する冷静さも必要です。
給与をUPさせたい人
ケアマネには施設ケアマネと居宅ケアマネがいますが、それぞれ働き方や給与が異なります。
夜勤が多く体力的にハードな場合がありますが、給与面を中心に考えると施設ケアマネがおすすめです。
少しでも高い給与が欲しいという方は施設ケアマネを選択しましょう。
ケアマネとしての実績を積みたい人
ケアマネとしての経験や実績を積みたい人は施設ケアマネを選ぶのがおすすめです。
居宅ケアマネが担当できる人数は35人程度ですが、施設ケアマネの場合は100人程度です。
担当人数が多いほど多くのケースを経験できるので、ケアマネとしての実績を積むには施設ケアマネを経験しておくのがおすすめです。
介護業務をしたい人
施設ケアマネの場合は実際の介護業務や相談員業務を兼務することが多いです。
居宅ケアマネはケアプランを作成して地域と連携する業務がほとんどなので、実際の介護業務をすることはほぼありません。
介護現場での仕事が好きな人は施設ケアマネを選びましょう。
体力に自信がある人
施設ケアマネは担当人数が多いだけでなく、実際の介護業務をすることも多いため忙しい場合が多いです。
そのため、体力がある人の方が向いています。
施設ケアマネに向いていない人の特徴
ここでは、施設ケアマネに向いていない人の特徴をおすすめします。
感情のコントロールが難しい人
介護施設の入居者の多くが認知症などの病気を患っています。
心も身体も思い通りにならないというストレスから理不尽な要求をされるということも多いです。
このような場面で毎回怒ったり泣いたりしていてはケアマネとして働くのは辛いかもしれません。
施設ケアマネとして働くためには自分の感情のコントルールができることも大切です。
ストレスを溜め込みやすい人
施設ケアマネは一人で担当する人数が多い場合は100人程度になることもあります。
担当人数が多いだけでなく現場業務があることも多く、場合によっては夜勤をすることもあるため、大変忙しい仕事です。
そのため、長く続けていくためには自分自身の心身のコントロールができる必要があります。
施設ケアマネとして働くためにはストレスをうまくコントロールできることが大切です。
体力に自信がない人
施設ケアマネは担当人数が多いだけでなく現場での介護業務をすることもあります。
そのため、長く続けていくためには体力が必要です。
体力に自身がないという方は日勤で勤務時間が決まっている居宅ケアマネを選ぶのがおすすめです。
施設ケアマネが職場を選ぶ際のポイント
ここでは、施設ケアマネが職場を選ぶ際のポイントを紹介します。
夜勤があるかどうか
選ぶ職場によって働き方が異なります。
日勤業務だけのところもあれば夜勤があるところもあるので、事前に働き方を調べておくことが大切です。
給与がいくらか
施設ケアマネの給与は働く施設によって異なります。
給与を重視して職場を選びたいという方は、住居系施設(特別養護老人ホーム・介護老人保健施設)を選ぶのがおすすめです。
ただし、これらの施設は夜勤があることが多いです。
まとめ
施設ケアマネは一人当たりの担当人数が多く、現場での介護業務をする機会もある忙しい仕事です。
しかし、利用者の生活を近くで支えながら多くの人と関わることができるやりがいがある仕事でもあります。
居宅ケアマネと施設ケアマネはそれぞれ働き方や仕事内容が異なるので、ご自身の生活スタイルや考え方に合う方を選びましょう。